大学院の修士課程でも、大学独自の制度や民間財団の給付型奨学金を利用できる可能性があります。ただし、学部で受けている給付奨学金をそのまま継続できるとは限りません。進学する課程、入学時期、年齢、国籍、進学先などの条件を満たす制度を探し、その後に給付額と併給条件を比べるのが基本です。
「返さなくてよい奨学金を探したい」と調べても、修士と博士、国内進学と海外留学、現金の給付と授業料の減免が同じ一覧に並んでいると、自分が応募できる制度が見えにくくなります。月額が大きくても、別の奨学金を併用できない、アルバイトに制限がある、最初の振込が入学後になるといった条件で、資金計画は変わります。
この記事は、2026年10月19日に確認した公式資料をもとに、国内の修士・博士前期課程への進学を考える人が、給付型奨学金の候補を絞る方法を説明します。2027年度向けの具体例を挙げますが、すべての奨学金を網羅する一覧ではありません。専門職学位課程や社会人、留学生については制度ごとに対象が異なるため、名称だけで応募可否を判断せず、各募集要項の対象者と照らし合わせて読み進めてください。
大学院の給付型奨学金は、大学独自と民間財団から探す
修士課程の給付型奨学金を探すときは、まず進学予定先の奨学金ページと、大学院生を対象にする財団の募集要項を見ます。大学の窓口を通して応募する制度と、財団へ直接応募する制度があるため、探す場所を一つに絞らない方が候補を見つけやすくなります。
学部のJASSO給付奨学金とは対象が違う
JASSOの高等教育の修学支援新制度による給付奨学金は、大学院を対象としていません。学部で受給していた人も、修士への進学後に同じ給付が続くものとして生活費を見積もると、不足が生じます。国内の大学院進学に向けてJASSOの支援を調べる際は、第一種・第二種の貸与や、授業料後払い制度など、それぞれの仕組みを分けて考える必要があります。
大学院の第一種奨学金には、特に優れた業績による返還免除の制度があります。しかし、これは最初から返還不要の給付奨学金を受けることと同じではありません。申請や審査のある免除を、採用前から確実な収入として扱わないことが、無理のない資金計画につながります。
現金給付、授業料減免、貸与を分ける
大学の案内では、授業料を減額・免除する制度も「奨学金」と呼ばれることがあります。毎月口座に入金される制度なのか、大学へ支払う金額が減る制度なのかで、生活費への使い方は違います。授業料の支払いが軽くなっても、家賃や食費に使える現金が増える時期は同じとは限りません。
| 支援の形 | 資金計画で見るもの | 混同しやすい点 |
|---|---|---|
| 現金の給付型奨学金 | 月額・年額、支給期間、振込日 | 「月額」の表示でも毎月振込とは限らない |
| 授業料・入学料の減免 | 免除される費目、金額、適用時期 | 生活費の現金給付とは別の支援 |
| 貸与奨学金・授業料後払い | 借りる額、返還の条件、資金が動く時期 | 給付制度や返還免除が確定した制度ではない |
必要な学費と生活費をまだ整理していない場合は、大学院の学費と2年間の費用で支出を分けてから、給付型でどこまで補えるかを考えると比較しやすくなります。
2027年度向けの給付型奨学金を3つの例で比べる
大学・財団によって、対象者の広さや支給期間、募集のタイミングは異なります。ここでは全国の大学院を対象にする財団と、特定大学の内部進学者に限る制度を比較します。表の「募集状況」は2026年10月19日時点のもので、翌年度にも同じ条件で募集されるという意味ではありません。
| 制度 | 主な対象・給付の概要 | 2027年度向け募集の見方 |
|---|---|---|
| 本庄国際奨学財団・日本人大学院生奨学金 | 日本国籍の大学院生・入学予定者。支給期間1〜2年の場合は月23万円 | 2026年9月1日〜10月31日受付。年齢などの資格と併給制限を照合 |
| キーエンス財団・給付型奨学金(大学院・修士課程対象) | 2027年4月に対象課程へ入学する人。月12万円を2年間 | 一次選考は2026年10月1日〜11月13日午前10時予定。年齢・課程の条件あり |
| 長崎大学・Saiyu Scholarship | 長崎大学学部から同大学院の修士課程等へ進学する人。月5万円を1年間 | 2027年度進学者向けの申請は2026年4月に実施済み。現在の応募先としては扱わない |
この表は主要な違いをつかむためのものです。たとえば「修士へ進学する」という一点が共通でも、外部進学者が使える制度と使えない制度があります。大学の合格発表時期に奨学金の募集が始まるとも限らず、学部在学中の春に申請を終える制度もあります。
本庄国際奨学財団は年齢・併給・就労条件まで読む
本庄国際奨学財団の日本人大学院生奨学金は、日本の大学院で学位取得を目指す日本国籍の学生・入学予定者を対象としています。2027年度の募集では、修士課程への入学時に30歳以下であること、2027年4月時点で残りの在学期間が1年以上あることなどが条件です。在学生も条件を満たせば対象となりますが、専攻分野を問わないという説明だけで応募可能と判断できません。
この制度を比較する際に特に見たいのは、他の奨学金との併給とアルバイトの扱いです。JASSOの貸与を含む他の奨学金を併用できない条件があり、給付額だけを足し算した収入計画は組めません。2027年度募集要項では就職・アルバイトは原則認めず、大学・研究に関係するTA・RAなどに例外を設けています。現在の働き方を続けながら受給できるかも、具体的な仕事内容に照らして判断します。
2027年度向けの応募締切は2026年10月31日です。募集ページから当該年度の要項と必要書類へ進み、研究計画、提出ファイル、選考の流れまでまとめて確認します。採用人数は若干名とされており、条件を満たすことと採用されることは分けて、選考結果が出る前の支出も準備しておくと安心です。
キーエンス財団は入学時期と課程の対象を絞っている
キーエンス財団の修士課程向け募集要項では、2027年4月に対象の2年制正規課程へ入学し、同年4月1日時点で24歳以下であることなどが条件です。通信教育課程、夜間課程、長期履修制度の適用者、留学生は対象外です。修士・博士前期に加え、要項が対象とする専門職大学院等もありますが、自分の課程と在籍形態まで一致するかを見ます。
給付は月12万円、2年間ですが、初回から毎月12万円ずつ入るという意味ではありません。2027年度募集要項では、初回は4〜6月分をまとめて6月25日までに支給する予定です。入学料の納付や4月の家賃を、この初回入金で払える前提にはしない方がよいでしょう。
また、貸与型奨学金は併用できますが、他の現金給付型奨学金は原則として併給できません。海外留学支援には例外があり、大学の授業料そのものが減免される制度は併用できます。授業料相当額を現金で受け取る給付と、納付額が減る減免を同じ扱いにせず、併用したい制度の種類を特定して判断します。
Saiyu Scholarshipは内部進学者と早い募集時期が特徴
長崎大学のSaiyu Scholarshipは、同大学の学部正規生が、引き続き同大学院の修士課程等へ進学する場合の支援です。家計や学業などの条件があり、他大学の学部から長崎大学大学院へ進学する人を、同じ対象に含めることはできません。
2027年度入学予定者向けの申請期間は2026年4月13日〜4月30日、書類提出期限は5月15日で、この記事の確認時点では終了しています。ここで紹介する理由は、募集時期が入試の合格発表よりずっと早い制度もあることを示すためです。これからの応募を考える人は、終了した募集へ申し込むのではなく、進学予定先に別の給付制度や今後の募集があるかを探します。
給付は進学後1年間で、修士の2年間を通じて同額が続く制度ではありません。併給は相手側の制度が認めるかも関わります。内部進学という条件に合う場合でも、2年目の費用と組み合わせる支援まで含めて考える必要があります。
応募資格は課程・進学先・基準日から絞り込む
奨学金の一覧を見つけたら、金額順に並べる前に、対象外となる条件を照合します。自分に関係する募集だけを残せば、必要書類の準備や推薦書の依頼に使える時間が増えます。募集要項の「大学院生」という言葉だけでは、修士、博士後期、専門職のどこまで含むかは分かりません。

入学時点と応募時点を分けて確認する
「入学予定者」「新入生」「在学生」は、応募できる時期を区切る条件です。学部4年で出願できる制度もあれば、入学後の在学生募集を待つ制度もあります。年齢や学年の基準日が定められている場合は、現在の状態ではなく、その日に何歳で、どの課程に在籍する予定かを当てはめます。
例えば、同じ2027年進学でも、4月入学のみを対象にした制度なら秋入学にはそのまま使えません。現在の修士1年生が、翌年の修士新入生向け制度に応募できるとも限りません。合格前に申請可能な制度についても、入学予定先をどのように示すか、進学先が変わったときに何を届け出るかまで要項で確認します。
国籍・在籍形態・内部進学の条件を見落とさない
募集名に「日本人」「留学生」とある場合は国籍等の条件があり、制度によっては研究生や科目等履修生が対象外です。また、社会人でも正規の修士課程に在籍する人、夜間課程を選ぶ人、長期履修で学ぶ人では、同じ資格判定になるとは限りません。働いているかどうかだけでなく、課程・修業年限・就労の条件を別々に読みます。
内部進学者向けの大学独自制度は、進学先の大学院名が一致するだけでは足りません。出身学部の条件を満たしている必要があります。反対に、外部進学者が応募できる大学独自制度もあり得るため、「大学の奨学金は内部生だけ」と一般化せず、募集要項の対象者欄を直接見るのが確実です。
候補表には「未確認」を残す
募集要項を読んでも、併願中の進学先の書き方や、特殊な履修形態が対象か分からないことがあります。その場合は、自分の推測で応募可にせず、候補表に「窓口へ確認」と残します。条件が明確な制度の準備を先に進めつつ、判断が必要な点を一件ずつ解消できます。
候補表には、制度名、対象課程、進学先、基準日、締切、必要書類、併給、初回入金、問い合わせ先をまとめると便利です。問い合わせる際は、「大学院生ですが対象ですか」だけでなく、入学予定月、課程、在籍形態、併用したい制度名を添えると、確認すべき条件が伝わりやすくなります。
給付額と一緒に、併給条件と入金時期を比較する
応募可能な制度が見つかっても、月額の高いものを選べば資金計画が完成するわけではありません。支給される期間、他の支援との組み合わせ、入金までの空白を並べると、進学後に実際に使える資金が見えてきます。

併願できることと同時に受給できることは別
複数の奨学金へ同時に応募することを認める制度でも、採用後の併給は認めないことがあります。募集要項の「併願」と「併給」を読み分け、両方に採用された場合にどちらを選ぶか、いつまでに辞退や報告が必要かを確認しておくと、結果通知後に慌てずに済みます。
併給は一方の制度だけが認めていても成立しません。大学側が併給可としていても、財団側が不可なら同時受給できない組み合わせです。支援の名称では判断がつかない場合は、月額、支給主体、返還の有無、支給目的を伝えて窓口へ問い合わせます。授業料減免と現金給付についても、制度ごとの定義に沿って確認します。
入学前・初回入金前・2年目に分けて見積もる
資金計画では、まず入学前に支払う入学料や引っ越し費用、次に入学後から初回入金までの生活費、最後に給付終了後の支出を分けます。給付開始月が4月でも、実際の振込が6月なら、その間に必要な現金を別に用意することになります。給付が1年間の制度なら、修士2年目を同じ収入で見積もれません。
| 時期 | 確認する支出と収入 | 計画に書き込むこと |
|---|---|---|
| 入学前 | 入学料、転居、住居契約など | 奨学金が入る前に払う額と、支払期限 |
| 入学後〜初回入金 | 家賃、食費、通学費、授業料など | 支給対象月と実際の振込日の差 |
| 給付終了後 | 残りの学費・生活費 | 2年目や標準年限を超える期間の収入 |
入学料の納付が難しい場合は、奨学金の結果待ちだけで期限を過ぎないよう、大学の入学料徴収猶予などの制度と申請期限を別に確認します。猶予は支払時期を延ばす仕組みで、給付型奨学金に採用されたことや免除されたことを意味しません。
採用が未確定の収入を分けて残す
応募資格を満たしていても、選考のある奨学金では採用が保証されません。家計表には「採用済み」と「応募予定・審査中」を分け、未確定の給付がなくても当面の納付や生活をどうするかを考えます。全額を給付でまかなう案だけでなく、大学の減免や貸与を組み合わせる案も、併給条件の範囲で検討できます。
JASSOの貸与を候補にする場合は、大学院の奨学金予約採用の申込先と手順で進学前の募集を確認できます。ただし、給付型への採用後も貸与を続けられるとは限りません。申込みと実際の受給を区別し、最終的な組み合わせは採用先の条件で決めます。
応募書類は研究計画・家計資料・依頼書類を分けて準備する
奨学金の応募では、制度によって成績、家計、研究内容、将来の目標などが審査対象になります。すべての制度で同じ書類が必要なわけではありません。まず募集要項から提出物を取り出し、自分で書くもの、大学等で発行してもらうもの、他の人に依頼するものへ分けると、締切から準備を逆算できます。

研究計画では、何をなぜどう調べるかをつなげる
研究計画の提出がある場合は、大学院の志望理由をそのまま長く書くのではなく、取り組む問い、その問いを調べる理由、方法、進め方のつながりを示します。募集側が専門外の読み手も想定している場合は、専門用語を並べるだけでなく、その研究で何が分かるのかが伝わる説明を添えます。
例えば「地域交通を研究したい」というテーマだけでは、対象も方法も読み取りにくくなります。「どの地域の、誰の移動を対象にし、どの資料や調査から、何を明らかにするか」まで分ければ、必要な準備を検討できます。これは説明のための例であり、特定の奨学金で採用された研究計画ではありません。自分のテーマに置き換えたときに、調査可能性や指導予定の内容とつながることが大切です。
入試向けの研究計画をすでに作っている人も、奨学金の指定様式、字数、質問項目に合わせて整理し直します。考え方の基礎は研究計画書の書き方も参照できますが、奨学金側が尋ねている項目を入試の様式で置き換えることはできません。
家計資料は対象者と証明年度をそろえる
経済状況を確認する制度では、本人の収入だけを見るのか、家計支持者の所得も必要なのかが異なります。収入と所得、暦年と年度、課税証明と源泉徴収票なども同じものではありません。募集要項で指定された対象者・書類名・年度を一覧にし、手元の書類で代用できるかを確認します。
家族に依頼する書類や、自治体・大学で発行が必要な証明書は、自分の文章よりも準備に日数がかかることがあります。証明書が届くまで研究計画に着手しないのではなく、それぞれ並行して進めると、直前の不足を減らせます。事情の変化で通常の証明書だけでは現在の状況を示せない場合は、独自判断で別書類に差し替えず、指定窓口の扱いを確認します。
推薦書や提出ファイルは、依頼から受付まで確認する
推薦書が必要な制度では、誰が作成できるか、応募者が提出するのか、推薦者が直接送るのかを先に確認します。依頼時には締切だけでなく、募集要項、指定様式、自分の研究計画や応募理由をそろえると、相手が対応する範囲を把握しやすくなります。推薦書が不要な制度に、独自の判断で追加書類を送る必要はありません。
オンライン申請も、入力保存と応募完了は別です。ファイル形式・容量・ページ数、必要な添付、最終送信後の受付番号などを確認し、募集先が示す完了状態まで進めます。締切当日に証明書の不足やアップロードの不備が分かっても間に合わないため、提出可能な状態を締切より前に作ることを目標にすると準備が進めやすくなります。
採用後も支給期間と継続条件を確認する
給付型奨学金は、採用通知を受け取れば無条件に修了まで支給されるとは限りません。継続手続き、学業や在籍状況の報告、交流会等への参加、他の支援の受給状況の届け出などが求められる制度があります。応募時に読んだ条件を、採用後の予定にも落とし込みます。
休学・転学・修了時期の変更は届け出の対象を確認する
休学、退学、転学、研究科の変更、留学などが決まった場合は、奨学金の支給にどのような影響があるかを確認します。「大学には手続きを済ませたから財団にも伝わる」とは限りません。大学と財団の両方に必要な届け出があれば、それぞれの期限と提出先を押さえます。
また、支給期間が標準修業年限に合わせて決められている制度では、修了が延びても自動的に給付が延長されるわけではありません。研究計画の変更や長期履修を検討するときは、学費と在籍期間だけでなく、支援が終了する時期も一緒に見直す必要があります。
「原則返還不要」と取消し時の扱いは両方読む
給付型は通常の貸与とは異なり、原則として返還を求めない制度ですが、虚偽申告や規約違反などの場合に支給取消し・返還の規定が置かれていることがあります。「給付だから、採用後は条件を確認しなくてもよい」と受け取らず、誓約や受給者向け規程の内容まで読んでおきます。
併給や就労に制限がある場合は、採用後に別の給付を受ける、アルバイトを始めるといった変化も関係します。判断に迷う変更は、始めた後に報告するより、制度上の扱いを先に問い合わせる方が資金計画を立てやすくなります。問い合わせの回答と適用される募集年度を残しておくと、後から条件を確認できます。
大学院の給付型奨学金でよくある質問
ここでは、修士進学前に迷いやすい点を簡潔に整理します。個別制度の応募資格については、当該年度の募集要項が判断の基準になります。
学部でJASSOの給付奨学金を受けていれば、修士でも継続できますか?
高等教育の修学支援新制度によるJASSOの給付奨学金は、大学院を対象としていません。修士への進学時には、大学・民間財団の給付制度や大学院向けの貸与などを別に調べます。
給付型奨学金と貸与奨学金は併用できますか?
制度によります。貸与との併用を認める給付制度もあれば、JASSO貸与を含めて併給を認めない制度もあります。組み合わせる両制度の規定を確認します。
大学院に合格してから探しても間に合いますか?
入学後に応募できる制度もありますが、進学前年度の春に募集を終える制度もあります。合格発表を待つのではなく、志望先を決める段階で募集時期を調べておくと、応募機会を逃しにくくなります。
給付が4月からなら、入学料の支払いに使えますか?
支給対象月と実際の入金日は別です。初回振込が入学後になる制度では、入学前の納付に間に合いません。募集要項の振込予定と大学の納付期限を並べて判断します。
まとめ:対象者・併給・入金の順で候補を絞る
大学院の給付型奨学金を探すときは、自分の課程、進学先、入学時期、年齢や国籍等の条件に合う制度を残し、給付額・支給期間・併給・初回入金を比べます。大学独自と民間財団の両方を見て、募集終了済みの制度と、現在応募できる制度を分けることも欠かせません。
候補が決まったら、締切から逆算して研究計画、証明書、必要な依頼書類を準備します。採用が決まるまでの支出と、支給が終わった後の費用も見積もっておけば、採用結果に合わせて進学後の資金計画を調整できます。
