研究計画書は、大学院で何を、なぜ、どの方法で研究するのかを説明する書類です。きれいな文章を書くことより、研究として筋が通っていることが大切です。この記事では、研究計画書を組み立てる7項目と作成手順を整理し、問い・方法をつなげる短い例文を紹介します。指定書式に合わせて初稿を書き、面接で説明できる状態にするまでの流れが分かります。具体的な文章から見たい方は、研究計画書の例文へ進めます。

初稿は、背景、問い、方法、意義、研究室との接点の順で作ります。分量は研究計画書の文字数と配分で決めてください。書き終えたら、研究計画書のダメな例と照合します。
研究計画書は何を見られる書類か
研究計画書は、入学後に研究を進められるかを見るための材料です。放送大学の研究計画作成案内では、目的、背景・先行研究、研究方法、期待される成果を挙げています。必要な項目や分量は志望先の募集要項と指定様式が基準です。以下の7項目は考えを整理するための枠組みで、すべての大学院に共通する採点表ではありません。
熱意だけでは弱い
研究したい気持ちは大切です。ただし、熱意だけでは研究計画書になりません。何を明らかにしたいのか、なぜその問いが必要なのか、どの方法で進めるのかを示してください。
面接で聞かれる前提で書く
研究計画書に書いた内容は、面接で聞かれる可能性があります。自分で説明できない言葉は使わないでください。書類の内容と面接回答は、同じ軸で準備します。面接全体は、院試面接で見られる評価軸で確認できます。
研究計画書で見られる7項目
初稿を作るときは、次の7項目に分けると、書く材料と足りない材料が見えます。指定様式に別の項目がある場合は、その項目に沿って内容を配置します。
| 項目 | 書く内容 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 背景 | 研究テーマの文脈 | なぜ今扱うのか |
| 問い | 明らかにしたいこと | 一文で言えるか |
| 先行研究 | 既に分かっていること | 不足点を示せるか |
| 方法 | 調査や分析の進め方 | 実行可能か |
| 計画 | 入学後の進め方 | 順番があるか |
| 意義 | 研究の意味 | 大きすぎないか |
| 接点 | 志望研究室との関係 | その研究室である理由があるか |
問いを一文で言えるか
研究計画書の中心は、研究の問いです。問いが広すぎると、方法も意義もぼやけます。「何を明らかにするのか」を一文で言えるようにしてください。
方法が具体的か
方法がない計画は、研究の見通しが弱く見えます。調査、実験、分析、比較、シミュレーションなど、どの方法で進めるのかを書きます。まだ確定していない場合でも、現時点の候補を示してください。
研究室との接点があるか
研究計画書は、志望研究室との接点も見られます。教員の研究テーマや研究室の強みと、自分の計画がどうつながるかを書きます。研究室訪問をした場合は、その内容も整理しておくと面接で話しやすくなります。
研究計画書の作成手順
研究計画書は、いきなり本文を書き始めると詰まりやすいです。先に材料を集め、問いを決め、方法を置いてから構成します。

1. 研究室と先行研究を調べる
最初に、志望研究室の研究テーマを確認します。教員紹介、研究室ページ、論文、学生の研究テーマを見てください。そのうえで、自分の関心と重なる部分を探します。
2. 研究の問いを決める
次に、研究の問いを一文にします。問いは広すぎても狭すぎても書きにくくなります。たとえば「教育とAI」だけでは範囲が広いため、対象となる学習者、扱う課題、確かめたい違いまで絞ります。
3. 方法を置く
問いが決まったら、方法を置きます。どのデータを使うのか、どの手法で分析するのか、どの順番で進めるのかを書きます。方法が不明確な場合は、面接で深掘りされやすいです。
4. 志望理由とつなげる
研究計画書は、志望理由と切り離さないでください。なぜその大学院か、なぜその研究室かを計画の中で示します。志望理由との接続は、志望理由を面接で伝える答え方も参考にしてください。
5. 面接を想定して推敲する
最後に、面接で質問される前提で推敲します。「なぜその方法ですか」「先行研究との差は何ですか」と聞かれても答えられるようにします。わからない部分は、未確定だと明示して構いません。
研究計画書のNG例
研究計画書では、よくあるNGを避けるだけでも読みやすくなります。ここでは、問い・先行研究・方法・研究室との接点を点検します。詳しい修正例は研究計画書のダメな例と直し方にまとめています。

テーマが広すぎる
「AIを研究したい」「教育を良くしたい」のように広い表現だけでは、計画になりません。どの対象を、どの方法で、何を明らかにするのかを絞ります。
先行研究がない
先行研究に触れないと、既に何が分かっているのかが見えません。大量に紹介する必要はありませんが、計画に関係する研究をいくつか整理してください。
方法が書かれていない
方法がない計画は、実行可能性が低く見えます。調査、実験、分析など、実際に何をするかを示します。
志望研究室との接点が薄い
どの研究室でもできそうな計画だと、志望理由が弱くなります。志望研究室の研究テーマや指導教員との接点を入れてください。
面接で聞かれやすい質問
研究計画書を書いたら、面接質問に変換します。書類に書いたことを、自分の言葉で説明できるか確認してください。
| 質問 | 見るポイント | 準備する回答 |
|---|---|---|
| なぜこのテーマですか | 関心の背景 | 卒業研究や経験とつなげる |
| 先行研究との差は何ですか | 調査の深さ | 既存研究と不足点を分ける |
| 方法は実行できますか | 現実性 | データや手順を示す |
| なぜこの研究室ですか | 接点 | 教員の研究テーマとつなげる |
研究計画書を書く前に集める材料
研究計画書を書く前に、材料を集めてください。材料が少ないまま書くと、抽象的な文章になりやすいです。最低限、志望研究室、先行研究、自分の経験、入学後の計画を整理します。
志望研究室の情報
研究室ページ、教員紹介、論文、学生の研究テーマを確認します。研究室のキーワードをそのまま並べるだけでは足りません。自分の関心とどこが重なるのかを書き出してください。研究室訪問をしている場合は、そこで聞いた内容もメモに残します。志望研究室が決まっていなければ、候補の整理から始めます。研究テーマに合う研究室の探し方を確認してください。
先行研究の情報
研究計画書では、先行研究を大量に紹介する必要はありません。ただし、既に何が分かっていて、どこに不足があるのかは示します。最初は、志望研究室の教員の論文や、よく引用されている論文から読みます。読んだ論文は、背景、方法、結果、残された課題に分けて整理してください。
自分の経験
卒業研究、授業、ゼミ、実験、独学で学んだことも材料になります。成果が大きくなくても、研究への関心や方法を説明できます。授業で抱いた疑問と、文献を読んで見つけた課題を分けると、自分の経験を研究の問いへつなげやすくなります。経験が計画に接続していると、面接で話しやすくなります。
研究計画書の構成例
構成が決まっていると、本文を書きやすくなります。大学院ごとに指定書式がある場合は、それを優先してください。指定がない場合は、次の流れで整理します。
| 見出し | 書く内容 | 目安 |
|---|---|---|
| 研究背景 | 分野の状況と課題 | 長くしすぎない |
| 研究目的 | 明らかにしたい問い | 一文で示す |
| 先行研究 | 既存研究と不足点 | 計画に関係するものだけ |
| 研究方法 | 調査や分析の手順 | 実行可能性を示す |
| 入学後の計画 | 修士での進め方 | 段階を分ける |
| 志望理由 | 研究室との接点 | 教員研究とつなげる |
背景は短くする
背景を長く書きすぎると、研究目的が見えなくなります。社会的な話から始める場合でも、すぐに自分の研究テーマへ戻してください。背景は、研究の問いを立てるために使います。
目的は一文で置く
研究目的は、一文で言えるようにします。一文で言えない場合は、テーマが広すぎる可能性があります。「本研究では、〇〇を明らかにする」と置くと、文章全体が締まります。
方法は面接で説明できる粒度にする
方法は、専門的に見せるための飾りではありません。入学後に実際に進められるかを示す部分です。データ、対象、手法、比較軸、期間をできる範囲で書きます。
例文:研究の問いと方法をつなげる
項目名だけでは書き始めにくいため、ここでは文章の組み立て方を示します。以下は説明用に作った架空の研究案で、合格者の提出書類ではありません。文献調査やデータの利用条件を確認した完成計画でもないため、そのまま提出する例文としては使えません。
研究テーマの例:大学生の学習計画の立て方と、課題提出までの進め方の関係
最初の関心が「大学生の学習を効率化したい」だと、何を調べれば答えになるのかが決まりません。対象を大学生の課題学習、行動を学習計画と提出までの進め方に絞ると、調査の範囲を考えられます。背景には関心を持った経緯を置き、その後に実際に読んだ論文から分かったことを続けます。
本研究では、大学生が学習計画をどのように立て、予定からの遅れにどのように対応しているかを明らかにする。授業の課題に取り組む過程を対象に、計画時に重視した点と、実際の行動を変更した理由の関係を検討する。
この段階では「計画を立てれば成績が上がる」とは主張していません。知りたいのは計画と行動修正の過程なので、方法もその過程を捉えるものにします。
調査協力者に課題への取り組みを一定期間記録してもらい、その記録をもとに半構造化インタビューを行うことを検討する。計画を変更した場面と理由を整理し、複数の事例で共通する点と異なる点を比較する。対象者の募集方法、人数、記録期間は、先行研究と調査負担を踏まえて具体化する。
半構造化インタビューとは、事前に用意した質問を軸に、回答に応じて補足の質問をする方法です。この例なら、記録だけでは分からない「予定を変えた理由」を聞く目的があります。一方、この調査だけで学習計画が成績を向上させたと因果関係を断定することはできません。効果を検証したいなら、問いに合わせて比較対象や測定方法を設計し直す必要があります。
先行研究の段落には、実際に読んだ論文の対象・方法・結果と、自分が調べたい範囲との違いを書きます。「このテーマは研究されていない」と先に決めるのではなく、見つけた研究に照らして問いを狭めます。著者名や文献名を架空のもので埋めることも避け、本文の記述と参考文献が対応する状態にします。
理系の例:比較条件まで書く
実験やシミュレーションを使う分野では、何と何を、どの条件で比べるかが方法の中心になります。たとえば「画像認識の精度を上げたい」という関心は、計算資源や対象データまで絞ると研究案になります。次も説明用の架空例であり、新規性を確認した提案ではありません。
本研究では、限られた計算資源で動作する画像分類モデルを対象に、入力画像の解像度と分類性能・推論時間の関係を検討する。同一の公開データセットと計算環境で複数の解像度を比較し、分類指標と処理時間を評価する。学習用と評価用のデータを分け、評価条件をそろえて結果を比較する。
ここから具体化するのは、データセットの利用条件、比較する既存手法、評価指標、計算環境、試行回数などです。単に「最新のAIを使う」と書くより、何が比較可能で、どこに制約があるのかが伝わります。ただし、解像度と性能の関係を比べるだけで新しい研究になるとは限りません。関連研究を調べ、未検証の条件や改善できる点を見つける作業が必要です。
例文を自分の計画に置き換える順番
例文の言い回しを先にまねるより、「対象」「明らかにしたいこと」「使える資料やデータ」「比較・分析の方法」を自分のテーマで埋めます。次に、各項目が対応しているかを読み直します。対象者へ話を聞きたいのに協力者を募る見通しがない、利用予定の装置が志望研究室にない、といった問題はこの段階で気づけます。
人を対象とする調査では、説明と同意、個人情報の管理、倫理審査など、所属先で必要な手続きも調査開始までの計画に含めます。まだ協力の約束がない相手を確保済みのように書く必要はありません。「協力依頼を行う予定」「利用可否を確認する」と現状を分けて書き、難しい場合の代案も検討します。
最後に研究室との接点を添えます。「有名な研究室だから」ではなく、指導教員のどの研究、方法、設備が自分の計画につながるのかを説明します。研究室の情報だけを写しても、自分の問いとの関係がなければ志望理由にはなりません。候補を探す段階なら、研究テーマに合う研究室の探し方から整理できます。
研究計画書を強くする推敲ポイント
一度書いたら、必ず推敲してください。推敲では、文章表現より先に研究の筋を見ます。
問いと方法が対応しているか
問いと方法がずれていると、計画が弱くなります。何を明らかにしたいのかに対して、その方法で本当に答えられるかを確認します。答えられない場合は、問いを狭めるか、方法を変えてください。
先行研究との差が見えるか
先行研究との差が見えないと、なぜその研究をするのかが弱くなります。既存研究と同じことを繰り返すのではなく、対象、方法、視点の違いを示します。差を大きく見せすぎる必要はありません。
志望研究室である理由があるか
どの研究室でもできそうな計画だと、志望理由が薄くなります。志望研究室の研究テーマ、設備、指導領域、教員の専門性と接続してください。研究室訪問で得た気づきがあれば、面接で補足できます。
提出前の最終チェック
提出前には、誤字脱字だけでなく、研究の軸を確認します。次の質問に答えられるか見てください。
研究の問いは何か
研究の問いを一文で言えない場合は、本文を見直します。問いが見えない計画書は、面接でも説明しにくいです。
なぜその研究室か
志望研究室である理由を言えるか確認します。大学名だけではなく、研究室のテーマや教員研究とつなげてください。
入学後に最初に何をするか
入学後の最初の行動が見えていると、計画が現実的に見えます。読む文献、確認する方法、相談するテーマを一つずつ決めてください。
研究計画書の文章を読みやすくする
研究の筋が通ったら、最後に文章を読みやすくします。難しい言葉を増やすより、問いと方法がすぐ分かる文章にしてください。
一文を短くする
一文が長いと、主語と結論がずれます。研究背景、目的、方法を一文に詰め込まないでください。背景は背景、目的は目的、方法は方法で分けます。面接で読まれても理解しやすい文章にします。
抽象語を減らす
「社会に貢献する」「新しい価値を生む」だけでは、研究内容が見えません。抽象語を使う場合は、対象、方法、具体的な課題を添えてください。読み手が、入学後に何をするのか想像できる状態を目指します。
接続詞で流れを作る
研究背景から目的へ進むときは、論理の流れを明確にします。「一方で」「そこで」「本研究では」のように、段落の役割を分けます。ただし、接続詞を増やしすぎる必要はありません。段落ごとの目的が見えれば十分です。
添削を受けるときの準備
研究計画書は、自分だけで仕上げるより、誰かに読んでもらう方が強くなります。ただし、ただ丸投げするのではなく、見てほしい点を決めてください。
先生に見てもらう場合
先生には、研究の問い、方法、先行研究との接点を中心に見てもらいます。提出期限の直前ではなく、修正できる余裕を残して相談してください。質問したい点を3つに絞ると、助言を受け取りやすくなります。
友人に読んでもらう場合
友人には、専門外でも意味が伝わるかを見てもらいます。専門語が多すぎる部分や、話の順番が分かりにくい部分を指摘してもらいます。研究内容はその分野に詳しい教員、説明の伝わりやすさは友人など、相談相手に応じて見てほしい点を変えます。出願前の添削や事前相談を受け付けるかは、志望先の案内に従います。
研究計画書を面接メモに変換する
提出した研究計画書は、面接前に短いメモへ変換します。書類をそのまま暗記するのではなく、質問に答える形へ直してください。
一問一答にする
研究計画書の各段落に対して、質問を一つ作ります。「なぜそのテーマか」「なぜその方法か」「先行研究との差は何か」などです。答えは一分以内に収めます。長くなった回答は、結論と根拠を分けて短くしてください。
弱い部分を補足する
提出後に弱い部分へ気づくこともあります。その場合は、面接で補足できるように準備します。方法が弱いなら、入学後に最初に確認する文献やデータを決めます。先行研究が弱いなら、関連論文を追加で読み、差分を短く説明できるようにします。
書類と違うことを話しすぎない
面接で新しい話を増やしすぎると、書類との整合性が崩れます。提出後の調査で問いを修正する必要が生じた場合は、変更した理由と、元の計画との関係を説明できるようにします。書類と面接の軸がそろっていると、回答が安定します。研究計画書は提出して終わりではありません。面接で聞かれたときに、自分の言葉で説明できる状態まで仕上げてください。
まとめ:研究計画書は面接まで見据えて作る
研究計画書では、背景、問い、先行研究、方法、計画、意義、研究室との接点を整理します。文章をきれいにするだけでなく、面接で説明できる内容にしてください。問いを一文にし、方法を置き、志望研究室との接点を示すと、計画の軸が見えます。提出後は、書類を一問一答に変換して面接準備へ進みましょう。
参考にした一次情報
志望先ごとの提出形式は、出願年度の募集要項・指定様式が優先です。研究計画の基本的な考え方については、以下の大学の案内を参照しています。
- 放送大学:研究計画の作成(必要項目、参考文献)
- 香川大学:研究計画書には何を書けばいいですか?(目的、先行研究、方法の具体化)
- 北陸先端科学技術大学院大学・敷田研究室:研究計画書の書き方(問いと方法、研究の実行可能性。教員による解説)
