プライミング効果で勉強効率を高める
・先行する刺激(プライマー)に思考や行動が影響されてしまう仕組み
人は、常に”考えて行動している”わけではありません。
人には意識と無意識の2種類があります。
”意識できる意識”すなわち、顕在意識と、”意識できない意識”すなわち、潜在意識です。
人の意識は、よく氷山の一角に例えられます。
意識できる意識は、水面上に出ている氷山のうちのごく一部で、ほとんどの意識は、意識することすらできず、水面下に眠っています。
人は自分で考えて行動しているつもりでも、実のところこの”潜在意識”によって思考や行動に影響を受けているのです。
例えば、いくつか質問をするので、答えてください。
- 「消防車の色は何色ですか?」
- 「信号で”止まれ”を表すのは何色ですか?」
答えはわかりましたでしょうか?
それでは、最後の質問です。
「なんでもいいので、パッと思いつく果物を教えてください」
さて、思いついた果物が「りんご」や「いちご」などの果物であれば、それは思考が潜在意識によって引っ張られたからです。
消防車の色や、信号で”止まれ”の意味を表す色は、当然赤色です。
前の2つの質問により、”赤色”という言葉を思い浮かべていたため、脳が赤色に関連する語彙や知識が活性化され、思い出しやすかったり、覚えやすかったりする状態になっていたのです。
そして、このプライミング効果を活用することで、潜在意識に働きかけ、勉強効率を簡単に上げることができます。
本記事では、その方法をご紹介していきますが、まずは、プライミング効果の人に与える影響についてみていきます。
『影響を受けずにいられることはあり得ない!』プライミング効果
・先行する刺激
【ターゲット】
・プライマーによって影響を受ける刺激
プライミング効果をより深く理解するため、有名な実験を2つ紹介します。
「老人」を連想すると歩行速度が落ちる?
佐々木正悟さんが書いた、『すぐやる人に変わる心理学フレームワーク』(実業之日本社)に記されている、心理学者のジョン・バーグによる実験を紹介します。
- 被験者は、「言語能力を調べる」と言われ、テストを行う
- 「しわ」「引退」「ゲートボール」などの”老人”を連想させる言語パズルを行う
- その後、被験者たちはわずかに歩行速度が落ちた
被験者たちは、言語能力テストで”老人”という言葉を連想させられました。
老人を連想しただけで、「老人」=「歩く速度が遅い」というステレオタイプにつながり、結果的に自分の歩行速度にまで影響を与えてしまったのです。
また、この種の指摘はたくさんされていますが、『影響を受けずにいられることはありえない』と心理学者の意見は一致しています。
「乱暴な言葉」のパズルをすると、会話に割り込む時間が早くなる
2つ目の実験は、『言葉のパズル』を用いた実験です。
- 被験者に『言葉のパズル』をさせる
- 『丁寧な言葉』のパズルと『乱暴な言葉』のパズルをするグループに分ける
- その後、被験者と会話をし、会話に割り込むまでの時間を調べる
結果は、『丁寧な言葉』のパズルをした被験者は、会話に割り込むまでに9分以上待ったのに対し、『乱暴な言葉』のパズルをした被験者は、会話に割り込むまでに5分しか待ちませんでした。
『丁寧な言葉』や『乱暴な言葉』のパズル(プライマー)の影響が、その会話に割り込む(ターゲット)という行動に影響を与えているのです。
また、上述したように、『影響を受けずにいられることはありえない』と心理学者に言われているプライミングですが、そういう連想をさせられるとわかっているほど効果が弱くなります。
逆に、あまり気にも留めていないと、あっさりと影響されてしまうようです。
プライミング効果を活用し勉強効率を高める3つの方法
① プライマーで勉強のやる気を誘発する
② 勉強の順番を意識する
③ 関連する事柄を学ぶ
プライミング効果についてはある程度理解していただけたと思います。
次は、「プライミング効果でどうやって勉強効率を上げるの?」という疑問に答えていきます。
ここでは、プライミング効果を活用し、勉強効率を高める方法を3つご紹介します。
プライマーで勉強のやる気を誘発する
まずは、勉強ではなく、会社やチームのモチベーションを高める方法を例として挙げます。
会社やチームのモチベーションを高めたいときは、メンバーのやる気が上がる次のような言葉、あるいはイメージを頻繁に目につくようにすると効果的です。
- 給料
- 賞与
- 成功
- 目標達成
すると、プライミング効果によって仕事のやる気を高めることができます。
では、勉強のやる気を高めるためにはどのようにすればよいのでしょうか。
仕事の例と同じように、勉強のやる気が上がるような言葉やイメージを頻繁に目につくようにすればよいのです。
例えば、次のような言葉が考えられます。
- 合格
- 東大
- 目標達成
- 100点満点
- ハーバード大学
このような言葉を目にするだけで、「勉強ができる人」や「勉強で結果を出した」ところをイメージしますよね。
先行する刺激(プライマー)として、これらの「勉強ができる人」や「勉強で結果を出した」ことをイメージすることで、潜在意識に働きかけ、勉強のやる気のUPにつながります。
よく、「〇〇大学合格」と机の前に貼っているという話を耳にしますが、これらもプライミング効果によるモチベーションのUPにつながっているのでしょう。
紙に書いて貼る以外にも、これらの言葉が書かれている本を近くに置いたり、これらの言葉を連想する写真を手帳に挟んでおくなどの方法があります。
あなた自身が勉強のやる気が出る言葉、またはイメージを、頻繁に目につくところにたくさん置いてみてください。
勉強の順番を意識する
冒頭で、赤色をイメージしたあとに、「パッと思いつく果物を教えてください」という質問をしました。
これは、赤色をイメージすることで、潜在意識が赤色に引っ張られるため、「りんご」や「いちご」などの赤い色をした果物を思い浮かべやすくなるという話でした。
これを勉強に活用してみましょう。
- 英会話のレッスンの日は、朝に英単語帳を眺める
英会話のレッスンの日の朝に、英語単語帳を眺めておくことで、その後の知識の吸収率の上昇が期待できます。
これは、プライマーによる先行処理によって、ターゲットの内的処理が、より少ない労力で行なわれるためだと考えられています。
英単語の勉強をしたあとに、英語の模擬試験を解く。
いきなり難しい問題にチャレンジするのではなく、まずは簡単な問題を解いて関連知識を活性化させておくなど、勉強の順番も少し意識してみてください。
関連する事柄を学ぶ
「勉強の順番を意識する」と少し類似していますが、勉強前に関連する事柄を学ぶことで、その後の勉強の吸収率を高めることができます。
例えば、次のようなことが挙げられます。
- 簿記の勉強をする前に、M&Aや年金問題のニュースなどを見る
- 栄養管理の勉強をする前に、長寿や健康の雑学を学ぶ
- 英語の勉強をする前に、海外ドラマを観る
このように、勉強の前にちょっと関連するニュースを見たり、関係のある事柄を調べたりすることで、学習効率の上昇が期待できます。
プライミング効果によって、あらかじめ、見聞きしたものごとと似たようなものごとは、思い出しやすかったり、覚えやすくなったりします。
勉強の合間に関連するニュースをチェックするだけで、その勉強に興味が湧いたり、知識の幅が増えたりするので、ちょっとした工夫として活用してみてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「先行する刺激による影響なんてたいしたことないんじゃないの?」と思う方もいると思いますが、思っている以上に、先行する刺激の影響は大きいです。
「しわ」「引退」「ゲートボール」などの”老人”を連想させる言葉を見ただけで、歩行速度にまで影響を及ぼします。
『影響を受けずにいられることはありえない』と言われるほどに、人の行動や思考は無意識に引っ張られているのです。
勉強の直前に、『不合格』『0点』『赤点』などの単語を見せられたら、勉強のやる気は落ち、その後の勉強効率もいつもより下がってしまうということは感覚的にも理解できますよね。
逆にいうと、『合格』『100点満点』『東大』などの単語を見ることで、これらの単語のイメージが潜在意識に働きかけ、無意識のうちに勉強のやる気が出たり、モチベーションが上がったりするということです。
意識できない意識を活用して、勉強効率を高めるためにも、ぜひ先行する刺激を意識していただけると、幸いです。
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